課題先進国日本の先進事例を学ぶ
8月9日から約20日間、カリフォルニア州出身の一人の米国人大学院生がミガキハウスに滞在している。名前はアーロン・ホープ。アーロンは、スタンフォード大学で文化人類学を研究している博士課程の大学院生だ。現在26歳、初めて日本にやってきたのは約2年前。福岡県若市で大工さんの仕事を手伝ったり、農家の仕事を手伝ったりして、日本の地域に溶け込み、日本の文化を学んだ。
山元に来た理由
アメリカの文化人類学を研究している学生の多くは、中国やインドを研究テーマに選ぶそうだ。アーロン自身もスタンフォード大学に入学する際に書いた論文のテーマはインドについてだった。それがなぜ、いま日本にやってきて、それも東北の田舎町山元町にやってきたのか。そのきっかけはインドでのGRAとの出会いにある。アーロンがインドで研究していたとき、インド マハラシュトラ州プネーで日本品種のイチゴ栽培を開始したGRAのことを知る。それが引き金となって、インドの研究がまとまった後、山元町に飛んできた。
先進国でありなが課題の多い日本
アーロンが日本に興味を持った理由は、先進国でありながら、日本が多くの課題を抱えているからだそうだ。そしてその課題を乗り越えようと様々な先端技術、知識を駆使して取り組んでいる事例研究が将来役に立つとアーロンは信じている。東日本大震災、熊本地震など自然災害の多い日本、少子高齢化、地域の過疎化、結婚しない若者など、世界でもあまり経験したことがない課題に日本は世界に先駆け直面している。そんな課題山積みの日本にあって、力強く生き抜いている人、新しいコミュニティを創出する人、すべてが失われた場所で再起する人など、多くの魅力的な日本人に出会った。
日本の先進的な取り組みは将来の世界に役立つ
そんな日本の取り組みは、今はまだすべてを解決できているわけではないが、将来それらの壁を乗り越えるとアーロンは信じている。そしてその日本の技術や知識、考え方は、必ず世界の手本となると。だから、文化の違い、言語の違い、習慣の違いを乗り越え、日本に深く入り込み研究している。おそらくいろんなストレスもあるだろうけれど、アーロンはいつも笑顔で日本人の輪のなかに入っていく。本当に素敵な好青年だ。
論文化までの道のりは長い
アーロンの研究が論文化されるのは、7年、8年とまだまだ先だ。アーロンの目指す文化人類学の研究は、その国の文化、人となりを表面的に知るのではなく、深く知ることだ。簡単にまとめることもできるだろうが、アーロンはとことん入り込んで日本という国、人を知ろうとしている。だから一緒にご飯を食べ、語らう。アーロンは、将来大学の先生になりたいそうだ。そして、後輩たちに、日本の素晴らしさを主観的、感覚的なものではなく、しっかりとした研究の成果として伝えていきたいと考えている。
多様性に富むミガキハウス
夏休みのミガキハウスは、多様性の宝庫だ。インドやアメリカ、スウェーデンから人が山元町にやってくる。西は福岡、東は北海道から大学生が震災から6年経ったいまでもやってくる。ここ山元町には。震災後も少なくなったとはいえ、今なお多くの学生、社会人が訪れる。それはなぜか?復興からしなやかに立ち上がった強者が多いからではないかと思う。それにアーロンはなんとなく気づいて、心のままに山元町にやってきたのかもしれない。